目をしっかりと開けて周りを見回す。
木は一本もなく、辺り一面背丈の低い草むらが大きく広がっていた。
まだ若い黄緑色は鮮やかで、目を細めたくなるほどに眩く映る。
その草むらの先には更に上へと続く山の黒っぽい岩肌が見えた。
うちの森の奥にこんな場所があるなんて知らなかったな。
私は制服についた木のかすをはたきながらまた歩き出す。
「ネコちゃーん、ネコちゃーん」
草を踏みしめ、岩肌の見える方へ進みながらさっきの子ネコを呼んでみる。
でもあの子ネコの姿が見当たらないのだ。
えいっと茂みに手を突っ込んでも、ニャーと鳴いてみても、どこにもいない。
なんだか、狐につままれたような思いで唇を尖らせる。
さっきまでちゃんと追ってきたはずなのに。
とにかく走って疲れてしまい、私はへたりこもうとした。
けれど、間抜けな中腰の態勢で私は息を殺し動きをとめた。


