他人行儀を決め込んで、冷たい物言いをして、体をも私からそらす。

本当は声までも震えて、黒い翼を小さく抑えこんでいるくせに。

「私のためにそんな声出さないでよ、紫希。私なら大丈夫だから」

私は微かに身を起こし彼に呼び掛ける。

けれど彼は、俯いて更に声を強張らせて言い放つ。

「俺なんかを守ろうとするからだ。お前は戦が終わるまでここで待っていろ。もう戦場には来るな。なるべく早く人間界へ返せるようにする」

そう言って彼は腰をあげた。

一度も目をあわさずに逃げていく。

いつかの紫希もそうだった。

そうやって私を避けるんだ。

痛々しく、とげとげしい声を発して、私を遠く遠く突き放す。

これでは出会った頃の私たちとちっとも変らない。

私はケガをおった右腕を伸ばした。

電撃のように走る痛みに歯を食いしばり、それでも紫希の袖をむんずと掴んだ。