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私の体は、まるで壊れ物でも置くみたいにそっと、太い木の根元に下ろされた。

幹に背を預けた瞬間、肩にビリリと痛みが走って、私は顔をしかめた。

でも、意識はさっきよりもさえてきた。

ここは森だ。

ちょっぴりひんやりとした空気が流れている。

湿った土の香りがそこら中に立ちこめている。

座った土がやわらかい。

辺りには木々が密集し、見上げても光はほとんどなく薄暗い。

見通しがきかないから追手はそう簡単に来ないだろう。

でも、七瀬くんと乱麻くんはどうなっただろう。

そして何より気がかりなのは、目の前にいる彼のことだ。

紫希はさっきから無言で、懐から手拭いを取り出すと、なにやら細く割きだしていた。

けれど一度だって目は合わせてくれない。