たったふたりで何人もを相手にしている。

紫希がまわりこみ走り出す。

参列者全員が一斉に彼の方を向く。

紫希の行く手は、分厚く黒い烏天狗たちの壁。

取り囲まれる紫希。

多勢に無勢も甚だしい。

私は身を乗り出した。

けれど、腕を引かれて前に出られず、目を見開く。

痛みが走って顔を歪めた。

怒りに震えた武骨な手が、私の手首をひねっている。

琴弥が私の手首を手錠のように握りしめ、無表情で、騒動を見つめていた。

胸が騒ぐ。

私の手首の骨が呻く。

後ろのふたりは防戦に手いっぱい。

紫希ににじり寄る黒い大群。

いっぱいいっぱいな胸に目いっぱい息を吸い込んだ。