村を守るための抜け穴はある。

琴弥は私が能力をまだ使えないことなんて知らない。

守り鈴を置いてきたことを知らない。

押し黙って考える。

力がないなら知恵を絞れ。

私の中のしぼれるものはすべてしぼれ。

この世界にきてからまだ何もしていない。

私は戦うためじゃない、守るために来たんだろ。

そっと瞼を押し上げた。

閉じ込められている部屋にも、村にいたころと同じように光が溢れている。

相手の知らない情報は、逆手にとれば武器となるのではないか。

相手の懐の中ならば、小さな武器も大きな威力となる。

だとしたら、私にできることはまだあるはずだ。

私はお母さんのあの背中を思い出す。

お母さんは最後まで、私を、みんなを守るために、あの体を張った。