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ついに、この日が来た。

壁に頭も預け左を向く。

まっ白な障子越しに朝日が染みた。

私は未だ手を縛られたままで、体がみしりと悲鳴をあげる。

けれど、私は肩を使って障子を開けた。

開けた障子の向こうには木の格子がついていて、私は首を突き出して覗き込んだ。

遥か眼下に広がる街。

瓦を積んだ立派な家々が背骨のように連なり、紅白の幕が街のそこかしこを埋め尽くしている。

街はめでたい色一色。

いよいよ今日が、婚姻の日。

ここからはあの緑豊かな半妖の村は見えなくて、私は首をひっこめた。

そして私は目を閉じ、心を静かにする。

九条琴弥は言ったのだ。

私がここから消えようとすれば、村へすぐにでも攻め入ると。

でもそれは、裏を返せば、私がここであの人の妻となれば、すぐには攻め入らないということ。