私は一息に頭をあげれば、さっきまで微動だにしなかった響が入口まで駆けていた。

待って!

そう言うための声は出ず、私は髪を振り乱し必死に首を振る。

でも、響の手は、その肩にのびた……。

容赦なく、その手は真実を引っ張りだす。

一思いに部屋へ投げ入れられた大きな体。

私は悲鳴をあげて壁に貼りつけになる。

まん前の畳に伏せて丸まった男の体。

私は怯えて足もひっこめ、瞳をグラグラ揺らしうろたえる。

息さえ満足にできない。

大きくて引き締まった男の体が、まるでウサギのように震えはじめる。

伏せられていて顔は見えない。

響は男をつまんだ手を汚らわしそうに払い、襖をしめ切って、退路を断っていた。

男は、こちらの世界には珍しい洋服を着ている。

白いワイシャツに、黒のパンツ。

「えっ……」