ふふんと子供らしく笑う声が飛び込んでくる。

私はびくりとして瞬時に周りへ視線を走らせる。

すると視線がバチリとあった。

まっ白な壁に背を預け片膝をたてて座っている響と。

緩く巻かれた赤い腰帯が畳にのびている。

私は問いただそうと口を開きかけた。

でもその時襖の向こうから複数の足音が近づいて私は言葉を飲み込んだ。

音とうるさい鼓動が重なり合う。

響はやる気がなさそうに顔を伏せてこう呟いた。

「あぁ、総代様のおなぁ~り~だね」

ふざけきった言葉が響き、漆黒の襖が開く。

私は1ミリも動かずに、息を止め、開いていく襖をじっと見つめていた。

大きな黒い影が現れる。

翼と同じ漆黒の着物、肩につっかけただけで空気に舞う赤々とした羽織り。

背の高いその人の髪は黒くサラサラで、目のそばには印象的な泣きぼくろがある。