私は手を伸ばし叫ぶ。

けれど、気づけば私は突如、ばさりと音をたてて覆いかぶさる黒いものに覆われ始めていた。

乱麻くんの姿が見えなくなっていく。

目の前で大きな黒い羽根が散る。

視界が、なにも見えない黒に覆われる。

甘ったるい香りがたちこめる。

「君には大人しく来てもらうよ」

一幕被った遠い向こう側で、口説くように甘い声がした。

脳がしびれていく。

手にも足にも、まるで力が入らない。

気持ち悪いほど肺に充満していく甘い香り。

もう瞼を閉じているのかさえわからなかった。

なんの音も聞こえない。

私は暗黒の世界に閉じ込められていた。