「じゃあ、気をつけて帰れよ」
俯いている私の視界から、先生の大きな白いスニーカーが動き出す。
私はそっと顔をあげた。
見えるのはもう、しわの寄ったワイシャツの背中だけ。
「はい、また明日」
私はちょっとだけ唇に笑みを宿してろう下を蹴りだす。
さっきよりも、窓の外の景色がするすると流れだした。
肩も少し軽く感じる。
私は下りの階段を軽快におりはじめた。
踊り場に差しこむ夕日に、目を細める。
けれどその時だった。
胸に刺す激痛。
カバンは落ちて床に叩きつけられ、私は両手で痣をおさえた。
歪めた顔の瞼の隙間から、痣が光っているのが見える。
昼間よりも、張り裂けんばかりに痛い。


