紫希の幸せは、あんずさんといること……?

紫希のことなんてまだほとんど知らない……。

「この村の人もそう、いや、誰だってそう」

空を見上げる私の耳に七瀬くんの声がクリアに飛び込んでくる。

「人の幸せは、自分の物差しじゃ測れないんだ」

七瀬くんの言葉が胸に沁み込む。

雲がはけて空が明るくなる。

「それがたとえ、どんなにへんてこであっても、どんな辛さを抱えていても、その人にとっては、幸せの形にかわるかもしれない」

私は彼の方を向いた。

かれはちらりと私の瞳を見て、少年のように歯をいっぱい見せて笑う。

「不細工などら猫を、かわいいと思ってしまうことがあるでしょう?」

さっきまでの、曇った空気はどこへ……。

七瀬くんの笑顔は晴れやかだ。

「そもそも、俺らの幸せなんて、バカで、単純で、へんてこなもんなんじゃないかな。そんな幸せは、能力を持つ烏天狗にだって否定できないさ」