ふと、雨宮おじさんは笑いをとめてしゃがみこみ、私を見上げた。
穏やかな目が私をまっすぐにとらえる。
その見慣れぬ位置に、心臓がびくりと跳ねる。
「今日、元気がなかったみたいだけど大丈夫か? もしかしてお母さんのこととかか?」
低くて落ち着いた声が、ほんのりとあたたかい色に染まりだしたろう下の空気にゆったりと伝わっていく。
私は優しい空気を肌に感じながら、目を逸らした。
「そんなことないですよ。今更になってお母さんのことで悩んだりしてません」
視線はふらふらとさまよって、結局真新しい上履きに視線を落とした。
本当にもう、お母さんのことで悩んでなどいないはず……。
「そうか。でもなにかあったら、話すんだぞ? また、お父さんにも会いに遊びに行くから」
俯いて下がった私の頭を、ぐしゃりとなでる大きな手。
雨宮おじさんの手からぬくもりが伝わって、私はただ頷いた。


