強張った足先が転がった下駄にあたり、地面を掻いた。
たった音は、顔をしかめたくなるざらついた音。
私は思わず、唇に歯をたてた。
でも、七瀬くんの声は痛い音もわたみたいに包み込む。
「この花、人間界では見たことなかったでしょ? 凛ちゃん、今日はなんか元気ないっておばさんたちに聞いたから、この花の話をしにきたんだ」
かたく伏せていた瞼を持ちあげれば、七瀬くんが私の目線に合わせて背中をまん丸に丸めてまで、私の瞳を覗き込んでくれていた。
瞳は美しい琥珀色に輝いて、優しく細くなる。
全身に入っていた力が和らいで、私はぼうっとして彼を見ていた。
彼は穏やかな瞳で、まっ白な花を見つめる。
「これは、結い花っていうんだよ」
やわらかな羽のように舞い降りる声。
とても大切そうに紡がれたその名前。
私はもう一度、手の中にあるふっくらとした4枚の花びらに視線を落とす。


