「七瀬くん」

裏庭の端で、目も口も愛らしい弧を描く、見るからにいい人そうな笑い顔の七瀬くんが立っていた。

「昨日はごめんね。外出禁止令が出ちゃったんだって? 息が詰まってないかなと思って。隣、いいかな?」

相変わらず、大人っぽくて穏やかな人。

七瀬くんは初めて会った日から、こうやってとても優しい人だった。

太陽を見上げる時よりも高く、背の高い彼を見上げる。

茶色い髪がふわふわと金色に光り輝いて、すまなそうな苦笑さえあたたかに煌めいて見える。

あまりにあたたかすぎて、冷え切った胸が熱くなってしまう。

私は嬉しいのに、ちょっぴり泣きそうで、唇を引き結んでやっと頷いた。

まるで私は、こんなぬくもりが訪れるのを待っていたみたいだ……。

七瀬くんはゆっくりと隣へ腰掛ける。

そして、彼はいつか見た誰かのように、背中に隠した後ろ手を私へ差し出したのだ。

「これは、凛ちゃんへの差し入れ」