あんなまっ赤な火の海と、命をかけた重みのありすぎる言葉のやりとりに、私は今も圧倒され続けていて、胸がいっぱいなんだ。

なんど思い出しても、眩しいくらいの正義に溢れていたあのお母さんの足元にだって、私は及ばない。

もう、村の人たちにどんな言葉を向けたらいいのかわからない。

そして、あまりに酷過ぎる過去を持っていた紫希に、合わせる顔がなくなってしまった。

私なんかに彼を想う資格なんてないはずだ。

そんなことを思うと、足がどんどん重くなって、私はますますなにもできなくなっていく。

私は、重い胸から、空虚なため息を吐き出す。

なにもできないくせに、息だけはつまりそう。

それでも私は、見せかけの平和が流れるここから出るのが怖くて、縁側の縁にしがみついていた。

「やあ、凛ちゃん」

するとふいに、やわらかな声が風に運ばれてきた。

私は首をひねり、辺りを確認しようと前かがみになった。