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足を入れる気のない下駄の鼻緒が、親指の先にちょこんと引っ掛かっていた。

私はそのまま下駄をぶら下げて、弄ぶ。

縁側に座って、なんの気なしに見やった空は水色に綿菓子のような雲がふわふわと漂っていて、絵に描いたようないいお天気だった。

いくら辛いことがあっても朝は来る。

明け方になってやっと浅い眠りについたら、すぐに辺りは明るくなっていた。

朝から世話役の女性たちにすっかりお世話になって、自分からはなにも行動を起こさずに、おばさん達のお願いをしっかり守って、ずっとここにいる。

ぼけてしまったおばあちゃんみたいに、縁側の外の風景を見ることしか私には能がないのだ。

私は顔をしかめ、足に引っかかっていた下駄をやわく蹴りとばした。

でも、それは足元に落下。

ひっくり返って、かっこわるくお腹を上向かせている。

それはきっと私が、中途半端だから……。

ここに大人しくこもっているのは、村の人に無知な私の安っぽい言葉を吐けなくなったからだ。