「ごめんな。辛かったよな。見ない方がよかったか……?」
そんな時、紫希の弱々しい声が耳を掠めた。
「そんなことない。紫希こそ……。お父さんのこと、私、言葉が出てこない……」
涙が溢れる。
喉が苦しくてうまく声が出てこない。
ただただ目に焼き付いている、ボロボロでも立ちはだかり続けた優しくて大きな体。
紫希が私の背中をあやすようにそっと叩く。
私は紫希の背中で拳を握った。
悲しいのはあなたでしょう……。
私はいつもそんな彼が、悲しい。
だから私はそっと紫希から手をはなした。
「ねえ、私を生かしてくれたのは紫希、だったんだね」
触れてはいられなくて、私の手は居場所をなくしてさまよった。
私は乱麻くんから聞いていた。
“だって紫希くんはさ、もうすぐ16年前になる烏天狗の大襲撃の日からずっと、人間界でひとり、暮らし続けてたんだから”


