まっ赤な烈火を視界の彼方後ろへ流し、荒い息を鳴らしながら風景は走りだす。
「汚れた子供が逃げるぞ! 姫巫女の娘に守り鈴も抱えている! 捕えろ!」
背中で、いくつもの声が奮い立った。
戸惑ってふりかえった視界には、黒い翼を広げて覆いかぶさりくる烏天狗たち。
風景は走るのをやめ、迫ってくる黒き翼をかたまったままとらえ続けていた。
けれど、なにか大きな影が烏天狗の前に滑り込んだ瞬間、鈍い音が鼓膜に叩きつけた。
「俺の子供に手を出すな!」
上下に大きくなる視界。
すぐ目の前で、吠えるような男の声がとどろいた。
滑り込んだ黒い影が、重い音をたてて地に叩きつけられた。
ゆっくりと下ろされた視界に映ったのは、地面にかろうじて膝で立っている体格の良い男。
震えながらほんのりと笑う、優しげな目をしたひげ面。
次の瞬間、鮮やかすぎる赤が視界に飛び込んできた。


