その瞬間、誰もが目をみはる高く美しい鈴の音が、轟いたのである。
瞬時に上を向いた視界に映りこんだのは、天高く弧を描きながら、こちらめがけて降ってくる光輝く星のようなもの。
赤い縄で結ばれたふたつの鈴……。
姫巫女の腕はなにかを放ったように、頭上へとのびていた。
ほんの瞬きのあと、すぐそばで鳴り響いた鈴の音で視線が下ろされると、幼い腕の中で眠る赤ん坊が映りこむ。
その赤ん坊のおくるみの中に、滑り込んだ輝く鈴。
直後に飛んできたのは、喉をかきならした姫巫女の叫び声。
「紫希! 凛を抱いたまま人間界へ逃げろ! 全速力で死ぬ気で走れ!」
見えている視界は躊躇して揺れる。
何人もいる烏天狗の手から、何本もの黒い光線が姫巫女に迫っていた。
それでも、姫巫女はこちらへ向けて希望の声を打ち放つ。
「これは姫巫女としての絶対命令だ! どうか、凛を守ってくれ」
その声が響き渡るなり、視界は大きく揺れた。


