彼女は、背中で男に問いかけた。
「悪いね。お前だけは、この沈みかけの船の船長に、最期まで付き合ってくれるかい?」
男の浅黒い頬には、煌めくものが一筋流れた。
男は、かたく頷き返す。
姫巫女にはそれが見えないにもかかわらず、ありがとうと唇を動かしたのが見えた。
「答えは?」
待ちくたびれた老人は威圧的に目を細め、姫巫女を凝視する。
でも彼女は刃を振り抜くかの如く両腕を鋭く広げたのだ。
「そんなの初めから決まってるんだよぉっ! このクソじじい!」
炎の赤と空天狗どもの漆黒に染まった視界の中で、左右に広がった純白の着物が燦然と輝く。
姫巫女の声が空にまで鳴り渡る。
「この村の民、私の仲間は絶対に見捨てはしない! あんたらのように戦もしない。私たちがするのは、仲間を守る、ただそれだけだ!」
凄まじい叫びに地は唸る。


