「バカ言うんじゃないよ! お前は仲間だろ! 私がそんなのをききいれると思ったか!」
姫巫女の激しい叱咤に、如月は情けなく顔を歪めて、彼女を見上げた。
彼女は前髪を掻きあげて、空にため息を吐きつける。
「でも、まったく参ったね。よりによってこんな目の曇ったじじいに、大事な仲間の命を手にかけられるとはさ。私は落ちぶれたもんだわ」
風の吹き荒れる空の遠く彼方を見ながら、彼女の声は不安定に揺れまどう。
髪をなびかせ彼女はゆっくりと身をひるがえしながら、烏天狗には見えない角度で唇をわずかに動かした。
「だけど、未来ある子供らは絶対に死なせはしない。なあ、如月」
耳を澄ませないと聞こえないような小さな声だった。
でも、その声は、空気を震わせるほどに力強い。
決意に満ち満ちて澄みきった美しくまっすぐな声。
絹糸のような黒髪が、まるで優しく伸べられた手のようにやわらかく風に舞う。


