まっ黒な目を見開く老人の目には、手元でへしおれた杖が飛び込んでくる。
「本気で言っているのか、じじい」
姫巫女は思いきり口角をつりあげると、へし折った杖を矢のごとく業火へと投げ入れた。
杖はすぐに炎が食いつくす。
作られた笑顔は狂気に満ち、彼女の笑顔こそ烈火のごとく燃えさかる。
「随分目の曇った可哀想なヤツだな、おい」
彼女は微動だにせず呟くと、老人は折れた杖を汚らわしいもののように足元へ叩きつけた。
そして彼女を睨みつけ、低い声ですごむ。
「姫巫女は、うちの孫と違ってしつけがなっていないと身受ける。まあ、くだらぬ話はいい。私は短気なものでのう。お主に、ふたつの選択肢をやろう。琴弥、お主から言ってやるのじゃ」
老人の手が、隣でずっと大人しく立っていた男の子の肩へ重々しく触れる。
けれども、男の子は体も瞳すら動かさずに、機械のように口だけを動かし始めた。
「ひとつ目は、半妖ともどもあなたも焼け死ぬ。ふたつ目は、半妖全員の命を差し出し、我が一族に姫巫女の力を提供する。そうすればあなたの命も自由も奪いません」


