あっと息をのむ間に、姫巫女の鼻先へと向けて突きつけられた杖の切っ先。
姫巫女も、側についていた男もその場に凍りつく。
「威勢のいい姫巫女じゃ。じゃが、この民たちはゴミではないと? 聞き捨てならん。高貴な妖怪の血に人間の血を交わらせるなど言語道断! かつてこの世界の治安をお守りになられていた大天狗様から受け継いだこの役目を担う、我が烏天狗一族の言葉は、絶対なるものぞ!」
老人は今にも卒倒してしまいそうに、喉元を逸らして声を張り上げる。
杖の先は怒りにわなわなと震えながら、姫巫女の目へと向かって憎しみ深くにじり寄る。
「半妖は、この世を汚すいやしい獣。それを生み出した半妖と人間も同じ。一匹残らず討伐せねばならぬのじゃ!」
音をたててなだれ落ちていった家の屋根の音も押しのけ、響き渡ったのはまるで、悪魔の叫び。
しかし、叫びを断ち切るように、耳をつんざいた破壊音。
姫巫女の鼻先で木片が粉となって煌めいて飛び散った。
白く細長い華奢な指には、うねるように隆起した枝が絡まっていた。


