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この村の月も、変わらず青白い。

見上げた空はもう、いくら目を凝らしても、気が遠くなるほどの暗い闇。

裏庭のハナミズキの葉は、濡れたみたいにてかって揺れていた。

縁側に座っていた私は、開け放っていた障子へ力を抜くようにして背中を預ける。

耳元を吹き抜ける夜風が、静かに唸る。

風がひやりと身を刺して、私は薄い寝間着をかきよせた。

まっ白で寒々しい布が、月の光を無駄に反射する。

襟元の素肌へ微かに触れた手は、氷みたいに冷たくてびくりとした。

私は冷たい手同士を握りあい、喉の奥で切ない笑いを押しつぶす。

もう何時間こうしているのだろう。

天くんの家から帰ってくるなり、おばさんたちにはこの屋敷で休んでいてもらわなくては困ると激しく頼まれ、ひとり上げ膳据え膳してもらって、私はずっとぼんやりしている。

部屋の隅の行燈は消してしまい、おばさんが敷いていってくれた布団には一度も入っていない。