「そして私にも……。親子ほどの年齢差の人間の私に、時々恋しくなる人間界のことを話し聞かせてくれました。涼子は、実の娘のように可愛かった」
お婆さんの瞳から涙がこぼれ落ちる。
私は目を大きく見開いて、お婆さんの向こう隣りを見た。
まだなにもない板の上に置かれた、老いた手。
うっすらと残像が見えた気がした。
お婆さんの肩を叩きながら、屈託なく笑う長い黒髪の少女が……。
板に触れるお婆さんの手が悔しさを掴んで結ばれた。
「だから、あなたをお腹に宿したと聞いたとき、私は嬉しくてたまらなかった。いつか、涼子とあなたが、手を繋いでここを訪れてくれる日を……、私は夢に見ていたのです」
丸く蹲って泣くお婆さん。
私は覆いかぶさるようにお婆さんの背中に手を回した。
「ありがとう、お婆さん、ありがとう……」
胸が締め付けられる。
泣き声が漏れそうで、お婆さんの背に顔を埋める。


