するとお婆さんは自身の手で、顔を強く覆った。
「ああ、ありがとうございます……ありがとうございます……。なにからなにまで、お母上様とそっくりでいらっしゃる」
お婆さんはすすり泣くように喋ったあと、肩に添えていた手を優しく握ってくれた。
私は少し安心して、お婆さんの横に座り、庭で跳びはねる天くんのけんけんぱを音楽のように聞いていた。
「あの、お婆さん。母のこと、ご存知でしたら思い出話なんてしてくれませんか? 母がどんな人だったのかよく知りたくて。それから、お婆さんや村のことも」
お婆さんをちらりと盗み見ながら控え目に申し出ると、お婆さんは頷き、朗読をするかのようにゆっくりと話し始めてくれた。
「数十年も昔、人間の私は妖怪の男と駆け落ちしました。妖怪であった恋人を深く愛しどこまでもついていく、そんな情熱にあふれていた。ですが当時、姫巫女伝説は風化の一途をたどっており、烏天狗は頻繁に襲撃してきて、人間の私の心はくじけそうになっていました」
お婆さんは人間。
私がはっと息をのむと、お婆さんは目尻に皺をよせて照れたように笑った。
そんな大恋愛をした人が隣にいるんだ。
更に続く話に、私は真剣に耳を傾ける。


