これはまるで、映画の中のワンカット。
戦地からの帰りを迎える、恋人の姿。
私は地面の砂を踏みしめて、カラカラに乾いた音をたてた。
ザラッという音に乗じて、胸の内側が引っ掻かれるように痛みだす。
私の胸はなぜ痛む?
紫希は笑えているのに。
あんなに慕ってくれている女の子がいるのに。
私の気持ちは、なぜ晴れないの……?
紫希の胸に寄せられる、恋色に色づいた頬が目の奥にまで焼きついて、目を逸らしたいのに、私は動けなかった。
紫希は、観客の私になんて目もくれない。
できあがった、ふたりの世界……。
見ると胸が痛いのに、釘づけになっていた。
いったい、なんでなの?
わけもわからず、鼻の奥がつんと痛くなる。
「おい、七瀬くん行っちゃうぞ?」
その時、乱暴に腕を引っ張られた。


