かたまっていた手を握られる。
ゆっくりと横を向けば、じっと静かな眼差しをそそぐ七瀬くんがいた。
「で、でも、お婆さんを……」
「今は、セツ婆を落ち着かせてあげて。頼むよ……」
やっと言葉を紡いでも、七瀬くんはすまなそうに眉を歪めた。
私は微かに下唇を噛み、いまだおいおいと泣き震えるお婆さんに深く礼をした。
「ごめんなさい。でもまたいつか、お話しがしたいです」
真摯にそう言い残し、不甲斐無さに肩を落としたまま、導いてくれる七瀬くんについて歩みを進めた。
まだ十歩ほどしか歩いていないけれど花道は終わろうとしていた。
私はそっと歩みをとめて、首を後ろへひねる。
隣同士の人々と素直に頬笑み会う素敵な光景。
だけど、質素な服が、はきつぶした下駄が、胸の奥を針のように刺す。
そして、あの細かったお婆さんの手も。


