顔をきちんとあげて、村の人たちを瞳にうつす。
「皆さん、今日からお世話になります! 母に比べ、大変不束者ですが、一生懸命頑張ります! よろしくお願いします!」
私は深く頭を下げた。
すると頭上で割れんばかりの拍手の音。
そっと頭をあげれば、たくさんの人々のあたたかな手が花開いていた。
ああ、灯火がついたみたいに胸があたたかい。
勝手に、目尻から涙が溢れていく。
その瞬間、右の肩をとんと押し出された。
つんのめりながら視界の端にとらえたのは、珍しくやわらかく微笑んでいる紫希。
「だから言ったろう。皆、お前を待っていたのだと。さあ、行け」
声に背中を押され、私は花道のど真ん中を一歩一歩踏みしめながら歩き出す。
地面にいくつも並ぶ古びた下駄。
肩を寄せ合う、洗いざらされた白っぽくて地味な着物。
でも、笑顔は力強く、とびきり明るくて眩しいほど。


