*・*・*・*・*

私は額の汗を拭う。

一歩一歩ゴツゴツとした地を踏みしめながら、息を切らす。

もう十分くらいは歩いただろうか。

ランプの黄色い光がちらつきながら、紫希の肩越しに身の周りだけを照らし出す。

両側から圧迫してくる荒削りの壁に身を細め、私はたどたどしく歩く。

なんだかしけっていて、服が体にまとわりついて気持ち悪い。

紫希はこんなに歩いているというのに着物を着崩すことなく、するすると滑るように歩いていく。

私はちょっぴり肩を落として苦笑い。

女の私よりもずっと、きれいな歩き方に軽くショックを受ける。

そんなことはさておき、こんなに歩いたのに、行き先には針の穴ほどの光も見えてこない。

あまりに周りが暗すぎて、どちらにどう進んでいるのかさえわからなくなって、私はきょろきょろと視線を走らせる。

たまに後ろが不安になるけれど、ふたりの足音は淡々と響いていた。