私は喉を鳴らして唾を飲む。

紫希は薄灰色の着物を翻した。

「では行くぞ」

私たちは頷き一列になって洞窟へと入っていく。

小さな明かりを頼りに、私は異界の地へとつながる洞窟の土を踏んだ。

見えるのは紫希の背中だけ。

その先なんて、あの小さな光では私の目には見えない。

足元は平たんではなくでこぼこしている。

でも、紫希という光があれば十分だった。

それだけあればつまずかない。

怯えない。

私は紫希の広い背中だけを追う。

まだちょっぴり差し込んでいる太陽の光は、紫希の背中を希望の白銀色に輝かせていた。