紫希は力強く言い放つと、すっくと立ち上がる。
続いてふたりも立ち上がり、私の前の道を開けるように横へはけていく。
私は動揺し後ずさることもできず、お父さんと正面から向かい合う。
あれからなにも口なんて聞いていない。
ましてや私はお父さんを疑っている……。
でもお父さんは、そこに立ち止まったまま、片時も瞳をそらさずに、黙って私の目を見ていた。
無言の時が流れる。
葉は、境内でお父さんと過ごしていたときのように、のどかにさらさらと頭上で音を奏でていた。
つい数日前までこの音を聞いていたのに、今は酷く特別に聞こえる。
参道に敷かれている角の欠けた石も、黒ずんだ木肌を晒している社も、太陽に照らされ、今は胸に迫ってくる。
お父さんの引き結んだ唇が、わずかに強張った。
「凛、気をつけて行ってきなさい」
学校に行く日の朝と同じ言葉。


