私はできるものなら誰もキズついてほしくない。

私には妖怪の世界のことはちっともわからないけれど、ただすてきな恋をしただけの人たちがキズつけられるなんて、納得がいかない。

ましてや、私のために誰かの体が盾になるなんて、心が割かれそうで、もうイヤだ。

イヤなんだ。

だけど、あの黒い翼を前にしたとき、私はこの足で立っていられるの?

わけのわからないこの能力を、戦の中でちゃんと使えるの?

確証も、勇気も、ない。

なんにもないの。

非力な手から布団を手放して、おもむろにポケットを探れば指先がスマホにあたる。

私はそっとそれを取り出した。

手におさまる画面には、赤く主張する未読メール、5の数字。

一昨日の夜から、たまっていったこの数字。

私は受信BOXを開く。

画面にずらりと並ぶのは、石川真央の文字ばかり。