あの人たちなら、恐ろしいこともやりかねないのだ……。

震えそうになる指をそっと手の平に隠しこむ。

「でも俺は、どちらも守りたい。お前の普通の人間としての幸せを、笑顔を、村を、俺は守りたい」

迷いのない瞳に打ち抜かれ気おされる。

紫希の剣幕に空気も静止する。

そして、紫希は自身の膝にかためた拳をつきたてた。

「そのために、俺たちの村に、この騒動の決着がつくまで身を置いてほしい」

声も出ない私。

決意の塊のようなかたい拳。

ろうそくの炎よりも熱いものを燃やす孤独な強い瞳。

彼は、どこまでも不器用なくらいまっすぐだ……。

「難しい選択だろう。もちろん人間界にとどまってもいい。俺らは全力を尽くす。考えておいてくれ」

そう言いながら彼はすっくと立ち上がる。

ほんの一瞬だけ、羽のように私の髪に触れて。