動揺して震える手は、紫希の肩を懸命に上へ押し上げる。
紫希は、俯いたまま少しずつ身を起こす。
「こんなことになったのは、お前の母を守りきれなかった俺たちのせいだ」
かたくなに顔をあげようとしない彼。
私は必死に頭を回転させて、言葉をひねり出す。
「だって、その時、紫希は幼かったでしょう? 前にもきいたよ? 悪いのは、ねえ、烏天狗でしょう?」
紫希は頷きもせず、広い肩を震わせる。
「当時は、俺の父が姫巫女守護隊の長として戦っていた。だが、涼子様を守れずに、烏天狗の刃に倒れた」
私は悲鳴まじりに息をのむ。
紫希の肩に添えたままだった手は離れて、不確かな手触りの布団の上へと落ちる。
膝の上で、まっ白になった紫希の拳が、怯えるように大きく震えていた。
「俺は、倒れゆく父を見て、ただうろたえていた」
紫希の顔がぱっと前を向く。
黒い髪を勢いよく宙に舞わせ、一直線に私の視線を掴む。


