「急にこんな話聞いて疲れたろ。今後のことは後日話す」
袖が手からすりぬける。
彼は薄情に立ち上がる。
炎が泣きだしそうに息継ぎををしている。
私はしかめ面をして、涙を堪える。
ねえ、どうしたら、私の声はあなたに届くの?
そんなにも私の声がうっとうしいの……?
「さて、お前の家はここから近い。おぶって送っていく。乗れ」
いつも私の目の前で、薄灰色の着物は翻る。
差し出されたのは、なにも話してはくれない背中だけ。
広くて大きい。
厄介事をすべて、背負いこみそうな背中。
でも、そんな背中はいらない。
私はただ、あなたに私の声をきいてほしいだけ。
震える声を、迷う心を、今は少し抱きとめてほしいだけ。


