悪寒がして私は自分の肩を抱いた。
でも紫希は険しい表情を崩さずに話を続けた。
「中でも烏天狗は厄介だ。大昔から半妖の存在を許さないアイツらは、俺らから姫巫女を奪うことばかりを考え、お前をずっとさがしていたんだろう」
烏天狗の顔が脳裏に浮かぶ。
豹変した九条くんの冷え切った顔。
恐怖の象徴の如く目の前に広がった闇色の翼。
思い出しただけでも恐ろしく、私は更に身を強く抱え唇を引き結ぶ。
けれど、突如やわらかくなった紫希の声が、小さな炎のぬくもりとともに、私を包んでいく。
「でも、最近までアイツらがお前を見つけられなかったのは、姫巫女の香りがたどれないように、力を封じていたからだ。それはすべて、お前の母、涼子様の術があってこそ」
私はそのぬくもりに誘われて、顔をあげる。
紫希がかたわらにいた。
私は目をみはる。
自分自身にしがみついてかたくなった手に、ゴツゴツとしたぎこちない手が重なる。


