「なんで、封印を……?」
私は脚を崩し、わずかに身を乗り出す。
けれども、紫希はまた炎に視線を戻して、下向き加減の顎のラインが胸に切ない影を落とす。
「姫巫女は、攻撃能力を一切持たず、右に出る者のいない守護術で弱き者を守ってくださった。俺は、姫巫女ほど心清らかな素晴らしい術者を他には知らない。だが、妖怪の世界はきれいではないんだ」
紫希は、苦しそうに眉間へ皺をよせ、強張る唇で言葉を紡いだ。
「わかるか? 強き盾は時として、最大の刃にもなる」
かたわらにある炎が、彼の頬を怒りの如く赤々と色づかせる。
私は口を開きかけた。
だって、盾と刃は対極にあるもの。
守るための盾が刃に変わるはずがない。
けれど、紫希の険しい目が鋭い刃のように輝き、私は身を引き押し黙った。
言葉の刃を喉元につきつけられているようで、紫希にはとても近づけない。
「俺らの世界ではな、妖怪の種族が減少の一途を辿り、それに伴って種族間の醜い勢力争いがあとをたたなくなっている。そこで鉄壁の盾があったらどうする? ヤツらは血眼になってもお前の力を欲するさ」


