私は痣を覆っていた手で羽織の襟を手繰り寄せた。
あたたかくて、なぜなのか泣きだしたくなって、我慢する。
そうしていると、薄灰の着物一枚だけになった彼は、ぎこちなくほんの少しだけ私から逸れた方向を向いていた。
こんなにあたたかい羽織をかけてくれたのに、紫希は凛とした横顔だけを見せている。
するとついに、紫希の唇は動いた。
「ああ、今日をもって、凛の母であり姫巫女だった涼子様が、全寿命を注いで残したふたつの術は、完全消滅した。ひとつは、俺たちの村を守る結界術。もうひとつは、当時赤子だったお前へ施した術だ」
「私に……?」
ぼそりと落ちる声。
部屋は一気に暗くなる。
布団が、雪のように青白く染まる。
窓にはもう、ぐんぐんと押し寄せる濃紺がいっぱいに映しだされていた。
白い光はもうわずか。
夜は躊躇もなく昼を一飲みにして、空が冷たい他人の顔をする。


