「ふははははっ! ウソと思えるとはめでたいな、半端者は。姫巫女よ、我らの側につく心が決まったら、その裏切り者に復讐をさせてやろう。また会おうではないか」

九条くんの笑い声が、頭の芯までガンガンと響く。

「半端者ども、姫巫女はいずれ迎えに行く。村も滅ぼしてやる。せいぜい覚悟しておけ」

脳が揺さぶられるように、天井がまわる。

目の端に映りこむ三人の黒い翼が空の彼方へと遠ざかっていく。

「待て! 烏天狗!」

歯を剥き出しにした紫希の叫びが、一膜被ったように遠く聞こえる。

黄色い光はすっかり消え、視界が白くかすみ、散乱していたガラスも、机も、見えなくなっていく。

ついに、視界がぐわんと揺れた。

窓はぐにゃりと歪み、紫希の肩から腰へ、視界がどんどん急降下していく。

ひらりひらりと、自分が、地へと向かって散っていく。

全部が解き放たれて、なんにも知らなくて空っぽで、軽いはずなのに、重たいの。

いっぱいジャンプすれば届きそうだった天井が、お前には届かないぞと言いたげに遠ざかる。