あたたかくて、だからさっきまでの恐怖がこみ上げて抑えが効かない。
「怖かった、怖かった……。あのろう下に真央がいるの。お願いだから、真央を、真央を助けて……」
喉はいうことをきかずにしゃくりあげてしまう。
でも、背中を優しくポンポンと撫でられる。
「わかった。必ず助ける。だけど、まずはこいつをどうにかしないとな」
「にゃはは、腕が鳴るぜ!」
後ろからは心強い、元気のいい声が聞こえてくる。
この声は間違いなく乱麻くんだ。
「半端者ながらよく、ここまでたどり着けたと誉めてやろう。だがここまでだ」
九条くんの静かな声が聞こえ、私ははっとし七瀬くんから身を剥がした。
九条くんの黒光りする爪がパッと宙に舞う。
そして2本の指が口にくわえこまれると、甲高い笛の音が響いた。
堰を切ったように流れ込んでくる風の大群が耳元で唸る。
足が持っていかれそうになって、一生懸命足を貼り付ける。


