ガラスよりも鋭い刃が、烏天狗の九条くん目がけて勢いよく繰り出される。
「その子娘から離れろ!」
翼をえぐるように刃が振り下ろされ、漆黒の羽が艶やかに舞い散る。
前に立ちふさがっていた彼が横へ立ち退き、まっ白な光が差し込む視界が広がった瞬間、私の腕は骨ばったあたたかい手にあっという間に引かれていた。
目に飛び込むは、煌めく刀と、風に翻る薄灰色の袖。
切れ長の瞳と、視線が交わる。
来てくれた……、紫希が。
しかしそれもつかの間、私の体は部屋の端まで投げ飛ばされ、身をこわばらせた瞬間、脇を誰かにしっかりと支えられた。
がっしりと掴まれている腕に気づき、目を瞬きながら隣を確認すれば、キツネ耳をはやした穏やかな顔の七瀬くんがいる。
「待たせたね、もう安心して」
包み込むやわらかな声。
優しく自立させてくれるたくましい腕が背に回る。
そうしたら目尻に急に熱いものがたまり出し、私は七瀬くんの襟元にしがみついてしまった。


