額に冷や汗が吹き出していく。

その直後、一歩踏み出した彼が静かに口にした。

「なんでもなにも俺は、お主の母が死を遂げた戦場にいたからな」

重々しいバリケードが作り出した薄闇が、肩にのしかかる。

紫希が言っていた、私が生まれた後の戦。

お母さんが死んだというあの信じられない話。

髪を掻きあげながら、眉一つ動かさない彼。

私は、奥歯を強く強く噛み締めた。

「なにそれ……? なんでそんなところにいたの? お母さんを、お母さんをっ、あなたたちが殺したの!?」

後先なんて考えられなかった。

拳を彼の胸に叩きつけ、私はくってかかる。

もう涙目だった。

上にある彼の端正な顔が醜く歪んでいく。

私は悔しさのあまり、ありったけの力で、私は彼の襟首を掴んだ。