「人をキズつけて何がおかしいの……? こんなわけのわかんないことしてなんの意味があんの!?」
私は手を縛るものをとこうと激しくもがいて上体をゆすり、岩肌に何度もぶつかった。
空を飛んでいるこの男も、姫巫女と呼ばれる意味も、さっぱりわからない。
それに誰かが血を流しているところなんて見たくない。
全部夢だと思いたかった。
なのに、岩肌ですりむけそうな手の平がひりりと痛む。
私は下唇に歯を立て、着物の彼の方を恐る恐る見た。
彼は腕のキズを放ったまま、烏天狗の男から片時も目を逸らさずに刀を構えなおしている。
知りもしない彼がなんでボロボロになってまで……。
胸が急激に締め付けられて、もう直視できなかった。
「姫巫女、君さえ手に入ればこんなヤツに用はないよ。それを苦しく思うなら、こっちへおいで」
烏天狗の男が高みから、私へと手をのべる。


