その余裕ぶりに、悪寒が走る。

けれど、私は痛み続ける痣をひねり上げて痛みを忘れさせ、目の前のバリケードを一睨みする。

一思いに踏み出せば、戸の前に積み上げられたテーブルの脚に手をかけた。

今は臆するより先に、やるべきことがある。

今すぐにここをぶちやぶって、真央を助けなきゃ。

歯を食いしばり、足を踏ん張らせ、力いっぱいテーブルの足を握ると、上体を思いきり後ろへ逸らす。

ギシギシと悲鳴をあげるテーブルの脚。

感覚がなくなってほどけそうな私の指と、もげそうな肩。

足はこれでもかと床を押しているのに、全身がバラけそうなほど引っ張っているのに、一向に1ミリだってずれてくれない。

まるで、接着剤で張り付けられたかのように。

耳には押しつぶした笑い声が響いてくる。

私はやり場のない拳をテーブルに叩きつけた。