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ごくりと唾を飲む。

妖しい光を宿す瞳に圧倒され、息も忘れていた。

けれどハッと我に返る。

「戦……? なに言ってるの……。もう、おかしなことばかり言わないで!」

“戦”そのたった一言に体はすっかり震えあがり、私は恐怖をかなぐり捨てるように彼の体に思いきり体当たりをした。

すると、彼は邪魔をすることなく身をひるがえす。

難なく解放される体。

力を持て余して突き進みよろめく私は、見張った目の端にゆらりと揺れる漆黒の翼を見る。

痣のあたりがまたずきりと痛み、私は顔を歪めつつ、踏みとどまった。

胸はイヤに高鳴る。

振り向けば、さっきまでとは打って変わって彼は本棚にゆったりと背を預け、悠長に腕を組んでいる。

薄笑いを浮かべた口元だけがはっきりと見える。