激しくゆすっても、彼におさえつけられた手はほどけず、棚が音をたてる。
私は吠えかかりたくて、怒りのままに歯を剥き出しにする。
けれど、急に髪を鷲掴みにされ頭を釣り上げられ、私は顔を歪ませる。
そんな私の顔を、彼は細めた目でじっくりと見物し、薄い笑みを宿す。
「なあ、お主だってそうであろう? 高貴な俺のことを、いつもとろりとした目で見ていたではないか」
「烏天狗のなにがそんなに偉いのよ!? あなたがしたことも、口にした言葉も、最低よ!」
私は噛みつくように、一息にまくしたてた。
怒りが言葉となって爆発する。
すると、乱暴に髪の毛をはなされ、彼は黒い瞳を冷たく光らせたのである。
「威勢がいいな。おもしろい。姫巫女であるお主には、本当の俺を教えてやるとしよう」
その怪しい光に、私は目を見開き、静かに息をのんだ。
「響という風来坊の烏天狗が世話になったろう? まったくもって恥だが、あれは我が弟だ。だがあいつでは命令一つこなせん。だから俺が直々に人間界なんぞにくだる破目になった」


