「なんで九条くんが……? ずっと、だましてたっていうの?」
口調も目つきも別人のような彼に、私の体は棚に張りつけになる。
彼がわからない。
恐れおののく声が蚊のようになく。
「だまされたとわかったら、すぐにそんな態度を取る。実に都合のいい生き物だな、人間の女というのは」
彼の目が、イヤ味ったらしく細められる。
「俺のことをなにも知らずとも、見てくれがいいだけですぐ惚れるくせに。そんな低俗な種族だから、半妖という汚れた子をなせたのか」
冷酷な言葉のあとに響く、蔑みの笑い。
「それでだまされたなぞと言うのは、人間には100万年早いわ」
目の前の喉から溢れだす高笑い。
黙って聞いていれば、この言い草はなんなんだ……。
クラスの女子が、彼に向けていた恋心は、すべて汚らわしいものだというの?
同じ命なのに、紫希たちはなんで汚れた子と、言われなくちゃいけないの?


