私はまた瞬時に身をひるがえす。

「ごめんなさい、雨宮先生。今日、急いでるので」

感情をこめる余裕もなく、冷淡に言い放った私は速足で雨宮おじさんの横を歩み去る。

この大事な二人には、私のこんな顔絶対に知られたくない。

私はもがいてもがいて、息をあげて、あたたかいものを振りきるように、懸命に腕を振って走っていた。

まだ青い色をした輝かしい空をうつす窓の前をいくつも過ぎ去りながら、私は心で泣く。

優しくしてくれたのに、キズつけてごめんなさいって。

私の心は今、壊れかけそうだった……。

お母さんの死の真相が、人の命を奪うだけの戦が、私にはどうしても納得できないんだ。

すべてを振りきらなきゃいられない。

走っていなきゃ、いられない。

けれどその瞬間、うず高く積んだ本を抱えた男子がくるりと振り向いたのだ。

お互いに目を見開きあった頃には、時すでに遅し。