あれが私の家。

私の家は、そう、神社なのだ。

石段の端を歩くというのは、神主であるお父さんからの教え。

まん中は神様の歩く道だから、人間は邪魔をしてはいけないんだとか。

とはいえ、神様なんて本当にいるのかなって疑ってしまう。

私はため息をついて頬を掻く。

お父さんに怒られそうだから言えないけど、生まれてこのかた神様の御利益なんて感じたことがない。

家が神社なんて学校のみんなからすれば風変わりなだけ。

石段をやっと登り終えると膝に手をつき、苦笑気味に辺りを見回した。

朱の塗装が随分と剥げて傷んだ社、辺りを囲むようにある森の鬱蒼とした木々。

おまけに、鳥居につけられた“姫巫女神社”の看板は、ずっこけたように肩を落として曲がっている。

極めつけには、落胆する私を上から目線で睨んでいる苔むしたこま犬。

なにもかもが古臭い。